水を3日分。 非常食も人数分。 非常用トイレも買った。
「これで、うちもBCPは大丈夫」
……実は、 ちょっと違います。
防災備蓄はとても大事。
でも、 防災備蓄=BCPではありません。
大きな違いは、 災害が起きた「そのあと」まで考えているかどうかです。
ざっくり言うと
防災対策=人や会社を災害から守る
BCP=被災しても重要な仕事を止めない・早く戻す
どちらか一方ではなく、 防災対策の先にBCPがあると考えると分かりやすくなります。
BCPと防災対策、何が違う?
まず、 難しく考えなくて大丈夫です。
たとえば地震が起きた会社を想像してみます。
| 防災対策 | BCP | |
|---|---|---|
| 目的 | 人命・建物・設備などを守る | 重要な事業を継続・早期復旧する |
| 考えること | 被害を減らす | 被害を受けたあと、どう仕事を続けるか |
| 例 | 備蓄・家具固定・避難・安否確認 | 代替拠点・業務優先順位・データ復旧・取引先対応 |
防災対策は、 社員がけがをしないようにする。
水や食料を用意する。 避難方法を決める。
こうした被害を減らす準備です。
一方のBCPは、
「会社が被災したあと、どう事業を続ける?」
まで考えます。
つまり、 防災対策とBCPは別物というより、 つながっているものです。
備蓄があっても、仕事が止まることはある
ちょっと場面を変えてみます。
地震が発生。
社員は全員無事。 水も食料もある。
ここまでは、 防災対策が機能しています。
でも――
- オフィスに入れない
- PCが使えない
- 社内サーバーにつながらない
- 仕入先が止まった
- 担当者と連絡が取れない
- 顧客への連絡を誰がするか決まっていない
こうなると、 社員は無事でも会社の仕事は止まります。
ここからがBCPです。
BCPで考えたいのは「何を守る?」だけではありません。
「何の仕事を優先する?」
「いつまでに戻す?」
「いつもの方法が使えなければ、どうする?」
まで決めておきます。
BCPそのものの意味や策定手順は、 BCPとは?事業継続計画の意味と策定手順 でも詳しく紹介しています。
中小企業のBCP、まず5つだけ決める
「BCPを作る」 と聞くと、
分厚いマニュアルを想像するかもしれません。
でも、 最初から100ページ作る必要はありません。
小さな会社なら、 まず5つの質問から始めます。
1|絶対に止めたくない仕事は何?
最初に決めたいのが、 優先する仕事です。
全部の業務を、 災害直後から通常どおり続けるのは難しいかもしれません。
たとえば、
- 顧客からの問い合わせ対応
- 商品の出荷
- システムの運用
- 店舗営業
- 取引先への支払い
など。
「これが止まると会社への影響が大きい」 という業務から考えます。
2|その仕事は、何がないと止まる?
次に、 重要業務に必要なものを出します。
- 人
- オフィス・店舗
- PC・設備
- 電気・通信
- データ
- 仕入先・協力会社
- 資金
たとえば、
「担当者1人しかパスワードを知らない」
これも、 立派な事業継続リスクです。
3|使えなくなったら、代わりはある?
オフィスへ行けない。
なら、 在宅勤務できる?
社内サーバーが使えない。
なら、 クラウドにバックアップはある?
いつもの仕入先が止まった。
なら、 別の会社から調達できる?
BCPで大切なのは、 「壊れないようにする」だけでなく「壊れたらどうする」を決めることです。
4|誰が判断する?
災害当日。
社長と連絡が取れない。
そこで、 全員が待つ。
これは避けたいところです。
事前に、
- □ 誰が社員へ指示を出すか
- □ その人が不在なら誰が代わるか
- □ 顧客へ誰が連絡するか
- □ 取引先へ誰が連絡するか
を決めておきます。
小さな会社ほど、 「○○さんしか分からない」を減らすことが重要です。
5|一度、やってみる
BCPは、 ファイルを保存したら完成。
ではありません。
たとえば、
「明日から3日間、オフィスが使えない」
と仮定してみます。
仕事はできる? 顧客へ連絡できる? 必要なデータを見られる?
実際に想像すると、 足りないものがかなり見えてきます。
防災備蓄は、BCPの「土台」
ここまで読むと、
「じゃあ備蓄はBCPに関係ないの?」
と思うかもしれません。
もちろん、 そんなことはありません。
水。 食料。 非常用トイレ。 ライト。
従業員が安全に会社へとどまれなければ、 事業を続ける以前の問題です。
だから、 防災備蓄はBCPの大切な土台。
ただし、 備蓄を買ったところで止めない。
備蓄した。その次を考える。
社員は無事?
↓
重要業務は何?
↓
何が止まりそう?
↓
代わりの方法は?
↓
誰が判断する?
ここまで進むと、 防災対策がBCPへつながっていきます。
備蓄量から整理したい場合は、 企業の防災備蓄は何日分必要?従業員数別の計算方法 も参考にしてください。
「BCPは難しい」で止まるなら、もっと小さく始める
社員10人。
総務専任はいない。 防災担当も兼務。
そんな会社で、 いきなり本格的なBCPを作るのは大変です。
なら、 もっと小さく始めて大丈夫です。
中小企業庁には、 中小企業が取り組みやすいBCPとして 「事業継続力強化計画」 という認定制度があります。
自然災害などのリスクを確認し、 初動対応や人・モノ・情報などを守る対策、 計画を実行する体制などを整理していくものです。
「BCPをゼロから作るのは重い」 という会社なら、 こうした仕組みを入口にする方法もあります。
従業員10人以下の会社向けの基本的な防災については、 従業員10人以下の会社、防災は何からやる?最低限やること7つ も参考にしてください。
まず30分。「うちが止まったら?」を話してみる
今日、 立派なBCPを完成させなくても大丈夫です。
まず30分。
経営者と担当者で、 この5つだけ話してみてください。
- □ 災害時、絶対に止めたくない仕事は何?
- □ その仕事に必要な人・設備・データは何?
- □ オフィスが使えなければどうする?
- □ 担当者が不在なら誰が代わる?
- □ 顧客・取引先へ誰が連絡する?
答えられないところがあれば、 そこが最初に作るBCPです。
まとめ|「備える」から「会社を止めない」へ
防災対策とBCP。
似ていますが、 見ている時間が少し違います。
防災対策
災害の被害を減らし、人や会社を守る。
BCP
被害を受けても、重要な仕事を続ける・早く戻す。
水を買う。 非常食を備える。 家具を固定する。
そこまでできたら、 次はひとつだけ。
「明日、この会社が使えなくなったらどうする?」
この質問をしてみてください。
防災備蓄からBCPへ進む、 最初の一歩になります。
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