取引先との打ち合わせ中に、大きな地震が起きた。社員なら防災マニュアルを知っている。でも、会議室にいる来客は「どこへ行けばいいですか?」と状況が分からない。
災害時の来客対応は、企業防災で見落としやすいポイントの一つです。オフィスの取引先はもちろん、店舗のお客さまや施設の利用者も含めて、「社員以外の人をどう守るか」を考えておく必要があります。
会社で決めたいのは、この5つ。
① まず、その場で身の安全を確保する
② 建物と周辺の安全を確認する
③ 施設内で待機するか、避難するか判断する
④ 来訪者の人数と居場所を把握する
⑤ 誰が案内・誘導するか決める
地震が起きても、すぐ外へ出すとは限らない
地震が起きたら、とにかく外へ避難する。そう考えがちですが、屋外にも落下物や火災、道路の混乱などの危険があります。
まずは揺れが収まるまで身を守り、その後に建物や周辺の安全を確認します。
東京都の「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」では、来所者についても従業員に準じて、施設内または他の安全な場所で待機させる考え方が示されています。
「外へ出す?」より、まず「今どこが安全?」。
建物に危険な損傷がある場合や、火災・津波などの危険が迫っている場合は、安全な場所への避難が必要です。災害の種類と現場の状況に応じて判断しましょう。
来客の「人数」と「居場所」を把握できる?
会議室に取引先が3人。受付に1人。別フロアにも来客がいる。
こんなとき、社員だけ点呼しても、建物内にいる全員の安全を確認したことにはなりません。
受付簿や入館システムなどを使い、「今、社内に社員以外の人が何人いるか」を確認できる仕組みを作っておきましょう。
- □ 来訪者の人数を確認できる
- □ 会議室やフロアなど居場所が分かる
- □ 担当社員が不在でも確認できる
- □ 避難後に来訪者を含めて点呼できる
停電で受付システムが使えなくなる場合もあります。紙の受付簿や担当者間の連絡など、代わりの確認方法も決めておくと安心です。
「各自で避難してください」では伝わらない
初めて訪れたオフィスで、突然「避難してください」と言われても、非常口や避難場所がどこにあるか分からない人もいます。
だからこそ、来客を対応している社員やフロア担当者など、誰が案内するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。
来訪者対応の基本ルール例
担当社員が来客へ状況を説明する
↓
施設の安全確認結果に応じて待機場所を案内する
↓
避難が必要なら安全な経路で誘導する
↓
待機場所や避難先で人数を確認する
担当社員が不在だったり、負傷していたりする場合も想定して、代理で対応する人も決めておきましょう。
こうした役割分担は、 企業の防災マニュアル、何を書く?最低限入れたい10項目 にも組み込んでおくと、社員全体で共有しやすくなります。
電車が止まったら「すぐ帰ってください」にしない
打ち合わせが終わった。でも、地震で鉄道は運転見合わせ。道路にも多くの人があふれている。
そんな状況で来客をすぐ帰宅させると、移動中の二次災害や混乱に巻き込まれる可能性があります。
東京都では、大規模災害時に多くの人が一斉に帰宅することを抑える「一斉帰宅抑制」を基本としています。
東京都の帰宅困難者対策ガイドラインでも、企業への来所者について、従業員に準じた安全な場所での待機が示されています。
つまり、「商談が終わったから帰ってもらう」とは限らないということです。施設の安全、交通機関、周辺の被害状況を確認し、必要に応じて安全な場所で待機してもらう対応を考えます。
ただし、自社施設が危険な場合は、行政機関が公表する一時滞在施設などの情報も確認し、安全な場所への案内・誘導を検討します。
企業の帰宅困難者対策については、 災害時の帰宅困難者対策|企業が準備すべきこと でも詳しく紹介しています。
来客が待機するなら、水やトイレはどうする?
来訪者を安全な場所で待機させる場合、考えたいのは場所だけではありません。
鉄道の運休が長引けば、飲料水やトイレ、災害情報の提供なども必要になる可能性があります。
東京都帰宅困難者対策条例では、事業者に対して従業員3日分の飲料水・食料などの備蓄に努めることを定めています。これは来客全員に同じ日数分の備蓄を義務付ける規定ではありませんが、実際に来客を受け入れる企業では、普段の来訪者数も踏まえて必要な物資を考えておくとよいでしょう。
「社員の人数分だけ」で足りる?
日常的に来客が多い会社では、災害時に待機する人数が社員数を上回ることもあります。備蓄品を計算するときは、来訪者の人数も考慮しましょう。
従業員や来訪者の備蓄を考える際には、 企業の防災備蓄は何日分必要?従業員数別の計算方法 も参考にしてください。
店舗・施設では「利用者をどう守るか」も重要
オフィスの来客だけではありません。商業施設、ホテル、展示場などでは、多くの人が施設内にいる時間帯に災害が起きる可能性があります。
東京都帰宅困難者対策条例では、百貨店や展示場などの集客施設について、多数の帰宅困難者が生じた場合、施設と周辺の安全を確認したうえで、施設内待機の案内や安全な場所への誘導など、利用者を保護する措置に努めることが定められています。
対応方法は施設によって異なります。店舗なら売場やバックヤード、ホテルなら客室や共用スペースなど、それぞれの施設で安全を確保できる場所と誘導方法を考えておきましょう。
自社施設の災害リスクについては、 会社のハザードマップ、どこを見る?事業所の災害リスクを確認しよう も参考になります。
防災訓練に「来客役」を1人入れてみる
社員だけで避難訓練をすると、全員が避難経路を知っているのでスムーズに進むかもしれません。
でも、実際の災害では何も知らない来訪者がいる可能性があります。
そこでおすすめなのが、訓練に「初めて会社へ来た人」を想定した来客役を入れることです。
- □ 来客へ分かりやすく状況を説明できた?
- □ 安全な待機場所や避難経路を案内できた?
- □ 来客を含めて人数を確認できた?
- □ 担当社員が不在でも対応できた?
- □ 避難が必要かどうかを適切に判断できた?
たった1人来客役を加えるだけでも、「受付に誰もいなかった」「避難場所を説明できなかった」といった課題に気づくきっかけになります。
訓練の進め方については、 企業の防災訓練、何をする?小規模会社でもできる5つの訓練 でも紹介しています。
まとめ|「社員だけ避難できる」では足りない
災害は、社員だけがいる時間に起きるとは限りません。取引先との商談中かもしれないし、店舗に多くのお客さまがいる時間かもしれません。
大切なのは、災害時に社員以外の人がいても、慌てず安全な対応ができることです。
まず会社で決めたいこと
来客の人数と居場所を把握する
↓
施設と周辺の安全を確認する
↓
待機か避難かを判断する
↓
担当者が案内・誘導する
↓
待機場所や避難先で人数を確認する
「来客は誰かが何とかする」ではなく、「誰がどう動くか」を決めておく。
まずは自社の防災マニュアルを開いて、来訪者対応のルールがあるか確認してみてください。
Bousailyでは、企業・施設・団体などの防災備蓄や、防災用品の選定についてご相談いただけます。
「何を備えればいいか分からない」「必要な数量を整理したい」「備蓄品をまとめて検討したい」といった段階からでもお気軽にご相談ください。
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