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企業の防災マニュアル、何を書く?最低限入れたい10項目

企業の防災マニュアルを確認しながら災害時の役割や行動を整理する担当者のイメージ

大きな地震が起きた。

社員は無事そう。

でも、

「で、次は誰が何をする?」

ここで全員が止まってしまう。

そんな状態を防ぐために作っておきたいのが、 企業の防災マニュアルです。

分厚い冊子を作ることが目的ではありません。

防災マニュアルの役割は、「災害が起きたときに迷わない」こと。

誰が判断する?
誰が安否確認する?
どこへ避難する?
社員を帰す?
仕事はどうする?

これを平常時に決めておきます。

企業の防災マニュアルとは?

企業の防災マニュアルは、 災害が発生したときの 社員の行動や会社の対応をまとめた社内ルールです。

地震。

台風・豪雨。

停電。

火災。

会社によって想定する災害は違いますが、 大切なのは、

「その場で誰かが考える」のではなく、あらかじめ基本動作を決めておくこと。

東京都も、 事業所における平常時の備えや発災時の対応を整理した 「東京事業所防災実践マニュアル」を公開しています。

防災マニュアルとBCPは何が違う?

よく混同されるのが、 防災マニュアルとBCPです。

どちらも災害対策ですが、 中心となる目的が少し違います。

項目 防災マニュアル BCP
中心となる目的 人命・安全の確保と初動対応 重要業務の継続・早期復旧
主な内容 避難、安否確認、役割分担、備蓄など 重要業務、代替手段、復旧目標など
使う場面 主に発災直後から 発災直後から復旧・事業継続まで

イメージとしては、

防災マニュアルで「人と会社を守る」。

その先を、 BCPで「仕事をどう続けるか」まで考える。

という関係です。

実際には重なる部分も多いため、 別々に考えすぎる必要はありません。

BCPについては、 BCPとは?事業継続計画の意味と策定手順を企業防災の視点で解説 でも詳しく紹介しています。

① 想定する災害と発動基準

まず決めたいのは、 「どんなときにこのマニュアルを使うのか」 です。

地震だけなのか。

台風や大雨も含むのか。

停電や断水も対象にするのか。

ここが曖昧だと、 災害が起きても誰もマニュアルを開きません。

たとえば。

事業所周辺で一定以上の地震が発生した。

自治体から避難情報が発令された。

オフィスが長時間停電した。

建物・交通・通信などに大きな被害が出た。

あわせて、 ハザードマップを確認し、 自社で起こりやすい災害から優先して考えます。

② 災害対策の責任者と役割分担

災害が起きてから、

「誰が指示を出しますか?」

と相談している余裕はありません。

そこで、 災害時の役割を決めます。

  • □ 全体を指揮する責任者
  • □ 社員の安否確認担当
  • □ 情報収集担当
  • □ 避難誘導担当
  • □ 初期消火・応急救護担当
  • □ 備蓄品の配布担当
  • □ 顧客・取引先への連絡担当

小規模会社なら、 一人が複数の役割を担当しても構いません。

ただし、 責任者が不在だった場合の代理者 まで決めておきます。

社長しか判断できない。

総務担当者しか備蓄場所を知らない。

そんな状態は避けたいところです。

③ 発災直後にやること

地震が起きた直後は、 やることを細かく書きすぎない方が動きやすくなります。

まずは、 人命と安全の確認です。

発災直後の基本例。

① 自分の身を守る
↓
② 周囲の社員・来客を確認
↓
③ 火災など二次災害を確認
↓
④ 建物内にとどまれるか判断
↓
⑤ 必要なら避難

パソコンを直す。

取引先へ電話する。

仕事を再開する。

それより先に、 まず人が安全かを確認します。

④ 避難・初期消火・応急救護

次に決めたいのが、 避難に関するルールです。

避難場所だけ書いて終わりではありません。

  • □ 非常口・避難経路
  • □ 一時的に集合する場所
  • □ 最終的な避難場所
  • □ 避難を判断する人
  • □ 来客を誰が誘導するか
  • □ 消火器・AED・救急用品の場所

特に大切なのは、 「地震が起きたら必ず外へ出る」と決めつけないこと。

建物の状況や周辺の火災、 津波・浸水リスクなどによって、 安全な行動は変わります。

避難の判断基準と情報源を、 マニュアルに書いておきます。

⑤ 社員・家族の安否確認方法

災害時、 社員一人ひとりへ電話する。

社員50人なら、 それだけでも大変です。

さらに電話がつながらなければ、 安否確認は止まってしまいます。

だからマニュアルには、 安否確認の方法と順番を書きます。

最低限決めたいこと。

誰が安否確認を始める?

何で連絡する?

社員は何を回答する?

誰が回答を集計する?

返信がない社員はどうする?

メール。

SMS。

ビジネスチャット。

法人向け安否確認サービス。

複数の連絡手段を想定しておくと、 一つが使えなくなった場合にも対応しやすくなります。

また、 社員自身が家族と連絡を取る方法も、 平常時に共有しておきます。

⑥ 情報収集と社内・社外への連絡

災害直後は、 情報が一気に入ってきます。

SNS。

ニュース。

社員からの連絡。

取引先からの問い合わせ。

情報が多いほど、 混乱しやすくなります。

そこで、 どこから情報を集め、誰が整理するか を決めます。

情報源の例。

気象庁

自治体

電力・鉄道などの事業者

ビル管理会社

テレビ・ラジオ

さらに、 取引先への連絡担当も決めておきます。

中小企業庁のBCP指針でも、 被災後は顧客・協力会社との連絡手段を確保し、 被害状況や今後の見通しなどを伝えることが示されています。

誰が何をどこまで伝えていいか。

ここまで決めておくと、 社外への発信も早くなります。

⑦ 帰宅困難者への対応

大地震が起きた。

電車も止まった。

すると社員から、

「帰っていいですか?」

と聞かれるかもしれません。

そのとき初めて考えるのではなく、 対応をマニュアルに入れておきます。

  • □ 社内待機を判断する基準
  • □ 待機する場所
  • □ 水・食料の配布方法
  • □ 非常用トイレの使い方
  • □ 帰宅を開始する条件
  • □ 家族との連絡方法

東京都などでは、 大規模災害時の一斉帰宅を抑制する考え方が示されています。

社員が会社に残るなら、 そのための備蓄も必要です。

詳しくは、 災害時の帰宅困難者対策|企業が準備すべきこと も確認してください。

⑧ 防災備蓄とライフライン停止への対応

マニュアルには、 備蓄品の一覧を貼るだけではなく、

「どこにあって、誰が出すか」

まで書きます。

確認したい備蓄。

飲料水

非常食

非常用トイレ

毛布・保温用品

照明

救急用品

衛生用品

充電・非常用電源

さらに、

停電したら?

断水したら?

通信が使えなくなったら?

と、 ライフラインが止まった場合の代替手段も考えます。

備蓄全体については、 オフィスの防災備蓄チェックリスト|総務担当者がまず確認すべき項目 も使ってみてください。

人数ごとの必要量は、 企業の防災備蓄は何日分必要?従業員数別の計算方法 で詳しく紹介しています。

⑨ 重要業務と事業継続の判断

ここから、 防災マニュアルとBCPがつながります。

社員の安全は確認できた。

でも、 会社は停電。

取引先から連絡も来ている。

そこで必要なのが、

「今日、本当に続けなければならない仕事は何か?」

という判断です。

最低限決めておきたいこと。

最優先で続ける業務

一時停止してよい業務

業務継続を判断する責任者

オフィスが使えない場合の代替手段

顧客・取引先への連絡方法

すべての仕事を守ろうとすると、 結局どれも守れないことがあります。

重要な業務から優先する。

その考え方がBCPです。

⑩ 防災訓練とマニュアルの更新ルール

防災マニュアルを作った。

社内共有フォルダに保存した。

完成。

……ではありません。

一度も使ったことがないマニュアルは、本番でも使えない可能性があります。

そこで、 定期的に訓練します。

  • □ 避難経路を実際に歩く
  • □ 安否確認をテストする
  • □ 備蓄品を出してみる
  • □ 非常用トイレの使い方を確認する
  • □ 災害対策本部の役割を試す
  • □ BCPの机上訓練を行う

訓練すると、

連絡先が古い。

担当者が異動している。

備蓄場所を誰も知らない。

書いてある通りに動けない。

そんな問題が見つかります。

それを修正して、 マニュアルを更新するところまでが防災訓練です。

最初から100ページのマニュアルを作らなくていい

企業防災マニュアルというと、

立派な表紙。

分厚いファイル。

何十ページもの文章。

そんなものを想像しがちです。

でも、 一番重要なのはページ数ではありません。

災害時に見て、すぐ動けるか。

小規模会社なら、 最初は数ページでも構いません。

たとえば、

1ページ目:災害時の行動フロー

2ページ目:役割分担

3ページ目:安否確認方法

4ページ目:避難場所・連絡先

5ページ目:備蓄品・重要業務

これだけでも、 何も決まっていない状態とは大きく違います。

防災マニュアルは「誰でも読める場所」に置く

総務担当者のパソコンにしか入っていない。

災害時にそのパソコンが使えない。

これでは困ります。

紙。

社内クラウド。

スマートフォンから見られる場所。

複数の方法で確認できるようにしておきます。

特に重要な部分は1枚にまとめるのがおすすめ。

初動

責任者

避難場所

安否確認

主要連絡先

災害発生直後に、 50ページのマニュアルを最初から読む人はいません。

詳しいマニュアル+すぐ見る1枚 の組み合わせが使いやすくなります。

法律上の「消防計画」などとは別に確認する

ここも注意したいポイントです。

社内で作る 「防災マニュアル」という名前の資料と、 法令や条例に基づく 消防計画・防災管理などの計画は、 必ずしも同じものではありません。

建物の用途や規模によっては、 防火管理者の選任や消防計画の作成・届出などが必要になります。

また東京都では、 事業所の規模などに応じた 事業所防災計画の作成に関するルールがあります。

社内マニュアルだけ作れば、法令対応もすべて完了するとは限りません。

自社・テナント・建物に必要な消防計画などについては、 建物管理者や管轄の消防署へ確認しましょう。

まとめ|防災マニュアルは「災害時の答え合わせ表」

企業の防災マニュアルに、 難しい言葉をたくさん入れる必要はありません。

最低限、 この10項目を決めておきましょう。

① 想定する災害と発動基準

② 責任者と役割分担

③ 発災直後の行動

④ 避難・消火・応急救護

⑤ 安否確認

⑥ 情報収集・社内外への連絡

⑦ 帰宅困難者対応

⑧ 備蓄・ライフライン対策

⑨ 重要業務・事業継続

⑩ 訓練・更新

災害が起きてから、

「どうします?」

と会議を始めない。

あらかじめ会社としての答えを用意しておく。

それが、 防災マニュアルを作る一番の意味です。

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