大きな地震が起きた。
社員は無事そう。
でも、
「で、次は誰が何をする?」
ここで全員が止まってしまう。
そんな状態を防ぐために作っておきたいのが、 企業の防災マニュアルです。
分厚い冊子を作ることが目的ではありません。
防災マニュアルの役割は、「災害が起きたときに迷わない」こと。
誰が判断する?
誰が安否確認する?
どこへ避難する?
社員を帰す?
仕事はどうする?
これを平常時に決めておきます。
企業の防災マニュアルとは?
企業の防災マニュアルは、 災害が発生したときの 社員の行動や会社の対応をまとめた社内ルールです。
地震。
台風・豪雨。
停電。
火災。
会社によって想定する災害は違いますが、 大切なのは、
「その場で誰かが考える」のではなく、あらかじめ基本動作を決めておくこと。
東京都も、 事業所における平常時の備えや発災時の対応を整理した 「東京事業所防災実践マニュアル」を公開しています。
防災マニュアルとBCPは何が違う?
よく混同されるのが、 防災マニュアルとBCPです。
どちらも災害対策ですが、 中心となる目的が少し違います。
| 項目 | 防災マニュアル | BCP |
|---|---|---|
| 中心となる目的 | 人命・安全の確保と初動対応 | 重要業務の継続・早期復旧 |
| 主な内容 | 避難、安否確認、役割分担、備蓄など | 重要業務、代替手段、復旧目標など |
| 使う場面 | 主に発災直後から | 発災直後から復旧・事業継続まで |
イメージとしては、
防災マニュアルで「人と会社を守る」。
その先を、 BCPで「仕事をどう続けるか」まで考える。
という関係です。
実際には重なる部分も多いため、 別々に考えすぎる必要はありません。
BCPについては、 BCPとは?事業継続計画の意味と策定手順を企業防災の視点で解説 でも詳しく紹介しています。
① 想定する災害と発動基準
まず決めたいのは、 「どんなときにこのマニュアルを使うのか」 です。
地震だけなのか。
台風や大雨も含むのか。
停電や断水も対象にするのか。
ここが曖昧だと、 災害が起きても誰もマニュアルを開きません。
たとえば。
事業所周辺で一定以上の地震が発生した。
自治体から避難情報が発令された。
オフィスが長時間停電した。
建物・交通・通信などに大きな被害が出た。
あわせて、 ハザードマップを確認し、 自社で起こりやすい災害から優先して考えます。
② 災害対策の責任者と役割分担
災害が起きてから、
「誰が指示を出しますか?」
と相談している余裕はありません。
そこで、 災害時の役割を決めます。
- □ 全体を指揮する責任者
- □ 社員の安否確認担当
- □ 情報収集担当
- □ 避難誘導担当
- □ 初期消火・応急救護担当
- □ 備蓄品の配布担当
- □ 顧客・取引先への連絡担当
小規模会社なら、 一人が複数の役割を担当しても構いません。
ただし、 責任者が不在だった場合の代理者 まで決めておきます。
社長しか判断できない。
総務担当者しか備蓄場所を知らない。
そんな状態は避けたいところです。
③ 発災直後にやること
地震が起きた直後は、 やることを細かく書きすぎない方が動きやすくなります。
まずは、 人命と安全の確認です。
発災直後の基本例。
① 自分の身を守る
↓
② 周囲の社員・来客を確認
↓
③ 火災など二次災害を確認
↓
④ 建物内にとどまれるか判断
↓
⑤ 必要なら避難
パソコンを直す。
取引先へ電話する。
仕事を再開する。
それより先に、 まず人が安全かを確認します。
④ 避難・初期消火・応急救護
次に決めたいのが、 避難に関するルールです。
避難場所だけ書いて終わりではありません。
- □ 非常口・避難経路
- □ 一時的に集合する場所
- □ 最終的な避難場所
- □ 避難を判断する人
- □ 来客を誰が誘導するか
- □ 消火器・AED・救急用品の場所
特に大切なのは、 「地震が起きたら必ず外へ出る」と決めつけないこと。
建物の状況や周辺の火災、 津波・浸水リスクなどによって、 安全な行動は変わります。
避難の判断基準と情報源を、 マニュアルに書いておきます。
⑤ 社員・家族の安否確認方法
災害時、 社員一人ひとりへ電話する。
社員50人なら、 それだけでも大変です。
さらに電話がつながらなければ、 安否確認は止まってしまいます。
だからマニュアルには、 安否確認の方法と順番を書きます。
最低限決めたいこと。
誰が安否確認を始める?
何で連絡する?
社員は何を回答する?
誰が回答を集計する?
返信がない社員はどうする?
メール。
SMS。
ビジネスチャット。
法人向け安否確認サービス。
複数の連絡手段を想定しておくと、 一つが使えなくなった場合にも対応しやすくなります。
また、 社員自身が家族と連絡を取る方法も、 平常時に共有しておきます。
⑥ 情報収集と社内・社外への連絡
災害直後は、 情報が一気に入ってきます。
SNS。
ニュース。
社員からの連絡。
取引先からの問い合わせ。
情報が多いほど、 混乱しやすくなります。
そこで、 どこから情報を集め、誰が整理するか を決めます。
情報源の例。
気象庁
自治体
電力・鉄道などの事業者
ビル管理会社
テレビ・ラジオ
さらに、 取引先への連絡担当も決めておきます。
中小企業庁のBCP指針でも、 被災後は顧客・協力会社との連絡手段を確保し、 被害状況や今後の見通しなどを伝えることが示されています。
誰が何をどこまで伝えていいか。
ここまで決めておくと、 社外への発信も早くなります。
⑦ 帰宅困難者への対応
大地震が起きた。
電車も止まった。
すると社員から、
「帰っていいですか?」
と聞かれるかもしれません。
そのとき初めて考えるのではなく、 対応をマニュアルに入れておきます。
- □ 社内待機を判断する基準
- □ 待機する場所
- □ 水・食料の配布方法
- □ 非常用トイレの使い方
- □ 帰宅を開始する条件
- □ 家族との連絡方法
東京都などでは、 大規模災害時の一斉帰宅を抑制する考え方が示されています。
社員が会社に残るなら、 そのための備蓄も必要です。
詳しくは、 災害時の帰宅困難者対策|企業が準備すべきこと も確認してください。
⑧ 防災備蓄とライフライン停止への対応
マニュアルには、 備蓄品の一覧を貼るだけではなく、
「どこにあって、誰が出すか」
まで書きます。
確認したい備蓄。
飲料水
非常食
非常用トイレ
毛布・保温用品
照明
救急用品
衛生用品
充電・非常用電源
さらに、
停電したら?
断水したら?
通信が使えなくなったら?
と、 ライフラインが止まった場合の代替手段も考えます。
備蓄全体については、 オフィスの防災備蓄チェックリスト|総務担当者がまず確認すべき項目 も使ってみてください。
人数ごとの必要量は、 企業の防災備蓄は何日分必要?従業員数別の計算方法 で詳しく紹介しています。
⑨ 重要業務と事業継続の判断
ここから、 防災マニュアルとBCPがつながります。
社員の安全は確認できた。
でも、 会社は停電。
取引先から連絡も来ている。
そこで必要なのが、
「今日、本当に続けなければならない仕事は何か?」
という判断です。
最低限決めておきたいこと。
最優先で続ける業務
一時停止してよい業務
業務継続を判断する責任者
オフィスが使えない場合の代替手段
顧客・取引先への連絡方法
すべての仕事を守ろうとすると、 結局どれも守れないことがあります。
重要な業務から優先する。
その考え方がBCPです。
⑩ 防災訓練とマニュアルの更新ルール
防災マニュアルを作った。
社内共有フォルダに保存した。
完成。
……ではありません。
一度も使ったことがないマニュアルは、本番でも使えない可能性があります。
そこで、 定期的に訓練します。
- □ 避難経路を実際に歩く
- □ 安否確認をテストする
- □ 備蓄品を出してみる
- □ 非常用トイレの使い方を確認する
- □ 災害対策本部の役割を試す
- □ BCPの机上訓練を行う
訓練すると、
連絡先が古い。
担当者が異動している。
備蓄場所を誰も知らない。
書いてある通りに動けない。
そんな問題が見つかります。
それを修正して、 マニュアルを更新するところまでが防災訓練です。
最初から100ページのマニュアルを作らなくていい
企業防災マニュアルというと、
立派な表紙。
分厚いファイル。
何十ページもの文章。
そんなものを想像しがちです。
でも、 一番重要なのはページ数ではありません。
災害時に見て、すぐ動けるか。
小規模会社なら、 最初は数ページでも構いません。
たとえば、
1ページ目:災害時の行動フロー
2ページ目:役割分担
3ページ目:安否確認方法
4ページ目:避難場所・連絡先
5ページ目:備蓄品・重要業務
これだけでも、 何も決まっていない状態とは大きく違います。
防災マニュアルは「誰でも読める場所」に置く
総務担当者のパソコンにしか入っていない。
災害時にそのパソコンが使えない。
これでは困ります。
紙。
社内クラウド。
スマートフォンから見られる場所。
複数の方法で確認できるようにしておきます。
特に重要な部分は1枚にまとめるのがおすすめ。
初動
責任者
避難場所
安否確認
主要連絡先
災害発生直後に、 50ページのマニュアルを最初から読む人はいません。
詳しいマニュアル+すぐ見る1枚 の組み合わせが使いやすくなります。
法律上の「消防計画」などとは別に確認する
ここも注意したいポイントです。
社内で作る 「防災マニュアル」という名前の資料と、 法令や条例に基づく 消防計画・防災管理などの計画は、 必ずしも同じものではありません。
建物の用途や規模によっては、 防火管理者の選任や消防計画の作成・届出などが必要になります。
また東京都では、 事業所の規模などに応じた 事業所防災計画の作成に関するルールがあります。
社内マニュアルだけ作れば、法令対応もすべて完了するとは限りません。
自社・テナント・建物に必要な消防計画などについては、 建物管理者や管轄の消防署へ確認しましょう。
まとめ|防災マニュアルは「災害時の答え合わせ表」
企業の防災マニュアルに、 難しい言葉をたくさん入れる必要はありません。
最低限、 この10項目を決めておきましょう。
① 想定する災害と発動基準
② 責任者と役割分担
③ 発災直後の行動
④ 避難・消火・応急救護
⑤ 安否確認
⑥ 情報収集・社内外への連絡
⑦ 帰宅困難者対応
⑧ 備蓄・ライフライン対策
⑨ 重要業務・事業継続
⑩ 訓練・更新
災害が起きてから、
「どうします?」
と会議を始めない。
あらかじめ会社としての答えを用意しておく。
それが、 防災マニュアルを作る一番の意味です。
Bousailyでは、企業・施設・団体などの防災備蓄や、防災用品の選定についてご相談いただけます。
「何を備えればいいか分からない」「必要な数量を整理したい」「備蓄品をまとめて検討したい」といった段階からでもお気軽にご相談ください。
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