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企業の防災備蓄は何から始める?必要量・備蓄品リストを防災士が解説

企業向け防災のアイキャッチ画像

「会社の防災備蓄を見直してほしいと言われたけれど、 何をどれくらい用意すればいいのかわからない」

企業の防災担当になった総務・人事担当者の中には、 こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

家庭の防災と違い、企業では従業員数に応じた必要量の計算だけでなく、 保管スペース、賞味期限の管理、予算、入れ替え方法まで考える必要があります。

この記事では、 企業の防災備蓄でまず何を準備すればいいのかを、 必要量の計算方法から備蓄品の選び方、保管・管理方法まで順番に解説します。

これから備蓄を始める企業はもちろん、 「今ある備蓄が本当に足りているのかわからない」という企業も、 ぜひチェックしてみてください。

なぜ企業に防災備蓄が必要なのか

企業の防災備蓄を考えるうえで知っておきたいのが、 災害発生時の「一斉帰宅の抑制」です。

2011年の東日本大震災では、 首都圏でも鉄道などの公共交通機関が停止し、 多くの帰宅困難者が発生しました。

大規模災害の直後に多くの人が一斉に移動すると、 道路や駅周辺が混雑するだけでなく、 救急・消防などの活動を妨げる可能性があります。

そのため東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」により、 事業者に対して従業員の一斉帰宅を抑制するとともに、 施設内で待機できるよう 必要な水・食料などを3日分備蓄することを努力義務 としています。

企業の防災備蓄は、 単に「災害用の商品を買っておくこと」ではありません。

災害発生後、従業員が安全に会社へ留まれる環境をつくる。

これが企業備蓄の基本的な考え方です。

企業の防災備蓄は「3日分」がひとつの基準

東京都では、災害発生時に従業員が施設内で待機できるよう、 水や食料などを3日分備蓄することを目安としています。

まず基本となるのが、飲料水と食料です。

飲料水

1人あたり1日3L × 3日分 = 9L

食料

1人あたり1日3食 × 3日分 = 9食

非常用トイレ

1人あたり1日5回程度 × 3日分 = 15回分

毛布・ブランケット

1人あたり1枚

まずは災害発生時に社内にいる可能性のある人数を整理し、 必要な備蓄量を計算してみましょう。

備蓄人数は「最大同時出社人数」を基準に考える

テレワークやハイブリッド勤務を導入している企業では、 全従業員が毎日オフィスにいるとは限りません。

東京都では、常に全従業員が出社していない場合、 出社状況に合わせて備蓄人数を調整できるとしています。

一方で、全員出社日などが決められている場合は、 最大の出社人数に合わせて備えることが示されています。

そのため、自社の勤務形態を確認したうえで、 災害発生時にオフィス内にいる可能性のある人数を基準に 備蓄量を考えましょう。

最大同時出社人数100名なら、どれくらい必要?

例えば、最大同時出社人数が100名のオフィスで 3日分を備蓄するとします。

備蓄品 1人3日分 100名の場合
飲料水 9L 900L
食料 9食 900食
非常用トイレ 15回分 1,500回分
毛布・ブランケット 1枚 100枚

飲料水だけでも900L。

2Lペットボトルなら450本になるため、 実際に計算してみると想像以上の量になることがわかります。

なお、従業員向けの備蓄とは別に、 災害発生時には来客や取引先、施設利用者などが 社内にいる可能性もあります。

自社の施設特性や利用状況に応じて、 こうした人のための追加備蓄が必要かどうかも検討しておきましょう。

企業で準備しておきたい主な防災備蓄品

水と食料だけでは、数日間の施設内待機に対応できません。

企業では、次のようなカテゴリーに分けて 備蓄を確認すると抜け漏れを防ぎやすくなります。

1.飲料水

備蓄の基本となるのが飲料水です。

保存期間だけでなく、 保管スペースや災害時の配布のしやすさも考えて容量を選びます。

一か所に集中させるのではなく、 フロアごとなどに分散させておく方法も検討しましょう。

2.非常食

アルファ化米、保存パン、ビスケットなど、 長期保存できる食品が企業備蓄では一般的です。

選ぶときは賞味期限だけでなく、 次のような点も確認しておきましょう。

  • 調理に水やお湯が必要か
  • そのまま食べられるか
  • 食器が必要か
  • アレルギーや食事上の配慮が必要な人に対応できるか
  • 保管スペースをどれくらい使うか

災害時にどのような状況で食べることになるのかまで想定して 選ぶことが大切です。

3.非常用トイレ

見落とされやすいものの、 企業備蓄で優先度が高いのがトイレ対策です。

災害によって断水や排水設備のトラブルが発生すると、 建物内のトイレが普段どおり使用できなくなる可能性があります。

3日分を考える場合は、 1人15回分程度をひとつの目安として、 必要人数から数量を計算してみましょう。

4.毛布・防寒用品

オフィスで夜を過ごすことになれば、 防寒対策も必要になります。

毛布やブランケットなどを準備し、 季節やオフィス環境に応じて必要な防寒用品も検討します。

人数が多い企業では、 保管スペースを抑えられるタイプを選ぶこともポイントです。

5.情報収集・電源用品

災害時には、 交通機関の運行状況や避難情報などを確認する必要があります。

  • 携帯ラジオ
  • モバイルバッテリー
  • 乾電池
  • 懐中電灯・ランタン

などを準備しておきましょう。

スマートフォンだけに頼らず、 停電時にも複数の方法で情報を取得できるようにしておくことが大切です。

6.救護・衛生用品

救急セットなど、 負傷者への初期対応に必要な用品も確認します。

そのほか、マスク、ウェットティッシュ、手指消毒用品、 生理用品など、施設内で数日間過ごすことを想定した 衛生用品も検討しておきましょう。

AEDを設置している企業であれば、 設置場所を従業員に周知するとともに、 日頃から管理状況を確認しておくことも大切です。

備蓄だけではなく「オフィスの安全対策」も確認する

防災というと水や非常食に目が向きがちですが、 地震では家具や什器の転倒・移動によるケガも考えられます。

例えば、

  • キャビネット
  • 書棚
  • ロッカー
  • コピー機
  • モニター

など、地震の揺れによって転倒・移動する可能性があるものを 確認しておきましょう。

「災害後に使う備蓄」と「災害発生時にケガを防ぐ対策」 の両方を考えることが企業防災では重要です。

企業備蓄で意外と難しいのが「保管場所」

必要量を計算したあと、 多くの企業が直面するのが保管スペースの問題です。

最大同時出社人数100名なら、水だけでも900L。

そこに食料、非常用トイレ、毛布などを加えると、 まとまった保管スペースが必要になります。

そこで検討したいのが 備蓄の分散保管です。

例えば、

  • 各フロアの倉庫
  • キャビネット
  • 会議室などの収納スペース
  • 従業員の個人ロッカー

など、自社のオフィス環境に合わせて配置します。

一か所にすべてを保管すると、 災害によってその場所に入れなくなった場合に 備蓄を取り出せない可能性があります。

「どれだけ備蓄するか」だけでなく、 災害時に取り出せるかまで考えて配置しましょう。

買って終わりにしない|賞味期限・使用期限を管理する

企業備蓄で避けたいのが、

「数年前に購入したまま、一度も確認していない」

という状態です。

非常食や保存水には賞味期限があり、 電池なども保管状態や期限を確認しておく必要があります。

少なくとも、

  • 商品名
  • 数量
  • 保管場所
  • 賞味期限・使用期限
  • 次回点検日

を一覧化して管理しておくと、 入れ替え時期を把握しやすくなります。

すでに備蓄を導入している企業は、 オフィスの防災備蓄チェックリスト を使って、数量・賞味期限・保管場所・管理体制を一度確認してみてください。

ローリングストックで廃棄を減らす

賞味期限が近づいた食品や飲料水をそのまま廃棄するのではなく、 社内で消費して新しいものへ入れ替える ローリングストックも方法のひとつです。

例えば、

  • 社員へ配布する
  • 防災訓練で試食する
  • 休憩スペースなどで消費する

といった方法があります。

定期的に消費して補充する仕組みをつくれば、 備蓄品の存在や保管場所を従業員に知ってもらうきっかけにもなります。

企業の防災備蓄チェックリスト

最後に、現在の備蓄状況を簡単に確認してみましょう。

  • □ 最大同時出社人数を把握している
  • □ 3日分を目安に飲料水を準備している
  • □ 3日分を目安に非常食を準備している
  • □ 非常用トイレを準備している
  • □ 毛布・防寒用品を準備している
  • □ ライト・ラジオ・電源用品を確保している
  • □ 救護・衛生用品を準備している
  • □ 家具・什器の転倒対策を確認している
  • □ 備蓄品の保管場所を把握している
  • □ 賞味期限・使用期限を管理している
  • □ 定期的な点検・入れ替えルールが決まっている

チェックが付かなかった項目があれば、 そこから優先して見直してみましょう。

まとめ|まずは「人数 × 3日分」から考える

企業の防災備蓄は、 最初からすべての商品を決める必要はありません。

まずは、 災害時に施設内へ何人が留まる可能性があるのか を把握することから始めます。

そのうえで、

  • 飲料水
  • 食料
  • 非常用トイレ
  • 毛布・防寒用品
  • 情報収集・電源用品
  • 救護・衛生用品

などを必要人数に合わせて検討していきます。

そして忘れてはいけないのが、 「買うこと」より「使える状態を維持すること」です。

保管場所、賞味期限、点検・入れ替え方法まで含めて設計してこそ、 企業の防災備蓄として機能します。

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