企業の防災備蓄を準備するとき、 「何日分あればいいのか」 「従業員100人なら水は何リットル必要なのか」 と迷う担当者も多いのではないでしょうか。
企業の防災備蓄では、まず従業員が3日間施設内で待機できる量を基準に考えるとわかりやすくなります。
国の帰宅困難者対策ガイドラインでは、3日分の備蓄量として、
- 水:1人9リットル
- 主食:1人9食
- 毛布:1人1枚
- その他の物資:必要量を算定
という目安が示されています。
この記事では、防災士の視点から、企業の防災備蓄は何日分必要なのか、従業員数別にどのくらい準備すればよいのかを計算方法とともに解説します。
企業の防災備蓄は何日分必要?
企業の防災備蓄は、まず3日分を一つの基準として考えます。
大規模地震の発生直後は、救命・救助活動が優先されます。
この時期に多くの従業員が一斉に帰宅すると、道路や駅周辺が混雑し、救助・救急活動などの妨げになるおそれがあります。
そのため、国の帰宅困難者対策ガイドラインでは、発災後3日間を目安に、従業員を施設内に待機させるための備蓄を準備する考え方が示されています。
ただし、「3日分あれば必ず十分」という意味ではありません。
災害の影響が長期化する可能性もあるため、企業の立地や業務内容、BCPなどを踏まえて、3日分以上の備蓄も検討するとよいでしょう。
1人あたり3日分の備蓄量
まず、従業員1人に必要な3日分の基本量を確認してみましょう。
| 備蓄品 | 1人1日 | 1人3日分 |
|---|---|---|
| 飲料水 | 3L | 9L |
| 主食 | 3食 | 9食 |
| 簡易トイレ | 5回分※ | 15回分※ |
| 毛布・保温用品 | - | 1枚 |
※簡易トイレは東京都の事業所向け資料で示されている「1人1日5個」を基にした目安です。必要量は勤務状況や従業員構成なども踏まえて検討してください。
つまり基本的な計算式は、
水=従業員数 × 9L
主食=従業員数 × 9食
簡易トイレ=従業員数 × 15回分
毛布=従業員数 × 1枚
となります。
従業員数別|企業の防災備蓄量
従業員数ごとに3日分を計算すると、次のようになります。
| 従業員数 | 飲料水 | 主食 | 簡易トイレ | 毛布 |
|---|---|---|---|---|
| 10人 | 90L | 90食 | 150回分 | 10枚 |
| 30人 | 270L | 270食 | 450回分 | 30枚 |
| 50人 | 450L | 450食 | 750回分 | 50枚 |
| 100人 | 900L | 900食 | 1,500回分 | 100枚 |
| 300人 | 2,700L | 2,700食 | 4,500回分 | 300枚 |
特に従業員数が100人を超えると、必要な備蓄量はかなり大きくなります。
単純に商品を購入するだけではなく、保管場所・配布方法・在庫管理まで含めて設計することが重要です。
従業員50人の場合の計算方法
例えば従業員50人の会社で、3日分を準備する場合を計算してみます。
飲料水
50人 × 3L × 3日
= 450L
主食
50人 × 3食 × 3日
= 450食
簡易トイレ
50人 × 5回 × 3日
= 750回分
毛布
50人 × 1枚
= 50枚
このように、人数を基準に計算すると必要量を整理しやすくなります。
従業員100人の場合はどのくらい必要?
100人規模になると、
- 飲料水:900L
- 主食:900食
- 簡易トイレ:1,500回分
- 毛布:100枚
が3日分の一つの目安になります。
例えば飲料水900Lという数字だけを見ると分かりにくいですが、2Lペットボトルなら450本に相当します。
実際には水だけでなく、食料、簡易トイレ、毛布、衛生用品なども保管する必要があります。
そのため、企業の防災備蓄では「数量」だけでなく、どのくらいの保管スペースが必要になるのかも確認しておく必要があります。
来客・取引先の分も備蓄する
災害は、従業員だけがオフィスにいる時間に発生するとは限りません。
来客や取引先、委託会社のスタッフなどが社内にいる場合もあります。
国の帰宅困難者対策ガイドラインでは、共助の観点から、外部の帰宅困難者に対応するため、例えば10%程度を余分に備蓄することも検討するよう示されています。
10%上乗せした場合の例
| 従業員数 | 想定人数 | 水 | 主食 |
|---|---|---|---|
| 50人 | 55人分 | 495L | 495食 |
| 100人 | 110人分 | 990L | 990食 |
| 300人 | 330人分 | 2,970L | 2,970食 |
来客が多い企業や店舗、ショールーム、商業施設などでは、実際の利用状況を踏まえて余裕を持った数量を設定するとよいでしょう。
正社員だけで計算しない
備蓄人数を計算するときに注意したいのが、正社員だけを対象にしないことです。
国のガイドラインでは、雇用形態を問わず、事業所内で勤務する従業員を対象とする考え方が示されています。
そのため、
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員
- パート・アルバイト
- 常駐している業務委託スタッフ
など、実際に災害発生時に事業所にいる可能性がある人数を確認することが重要です。
テレワークやシフト勤務がある企業では、単純な在籍人数だけでなく、最大出社人数を基準に検討する方法もあります。
水・食料以外に企業が備蓄すべきもの
企業の防災備蓄は、水と食料だけではありません。
施設内で3日間待機することを想定すると、次のような用品も必要になります。
- 簡易トイレ
- トイレットペーパー
- 毛布・保温シート
- 懐中電灯・LEDライト
- 乾電池
- モバイルバッテリー
- 携帯ラジオ
- 救急用品
- ヘルメット
- 軍手
- ウェットティッシュ
- 手指消毒用品
- 生理用品
- ごみ袋
- 敷物
さらに、事業継続に必要であれば、
- 非常用発電機
- 蓄電池
- 通信機器
- 工具
- 燃料
なども検討します。
燃料などの保管には法令上の制限が関係する場合があるため、保管量や場所について関係法令も確認してください。
簡易トイレは特に不足しやすい
企業備蓄で見落とされやすいのが簡易トイレです。
例えば100人が3日間滞在する場合、
100人 × 5回 × 3日=1,500回分
が一つの目安になります。
「100回分」の非常用トイレで考えると、単純計算では15セット必要になります。
水や食料だけでなく、災害時に毎日使用するトイレについても必要量を計算しておきましょう。
備蓄品はどこに保管する?
備蓄品は「会社に置いてある」だけでは十分とはいえません。
災害時に実際に取り出せることが重要です。
例えば、
- 備蓄倉庫が倒れた家具で塞がれる
- 鍵を持つ担当者が出社していない
- 停電でエレベーターが使えない
- 一か所に集中していて別フロアから取りに行けない
といった状況も考えられます。
高層ビルなどでは、エレベーター停止を想定して、複数のフロアに備蓄品を分散して保管する方法も検討しましょう。
100人分の備蓄にはどのくらいのスペースが必要?
必要な保管スペースは、備蓄商品の形状や収納方法によって大きく変わります。
東京都の帰宅困難者対策ハンドブックでは一例として、100人×3日分の水・食料・毛布を高さ1mに積み上げた場合、床面積約3㎡程度としています。
ただし、これは特定の備蓄品を想定した一例です。
実際には簡易トイレや衛生用品、救急用品、照明なども必要になるため、商品を選定した後に実寸で保管スペースを確認しましょう。
備蓄品は「買って終わり」にしない
企業の防災備蓄で起こりやすいのが、購入後にそのまま倉庫へ入れ、数年間確認しないケースです。
少なくとも定期的に、
- 賞味期限・使用期限
- 数量
- 保管場所
- 箱や容器の破損
- 担当者
- 従業員数の変化
を確認しましょう。
従業員数が増減した場合は、備蓄量も再計算する必要があります。
賞味期限が近づいた備蓄品はどうする?
食料や飲料水には期限があります。
期限直前になって大量に廃棄するのではなく、
- 社内防災訓練で使用する
- 従業員へ配布する
- 定期的に入れ替える
- 条件を満たすものは寄付につなげる方法を検討する
など、計画的に入れ替えていく方法があります。
まだ食べられる・使用できる備蓄品については、廃棄するのではなく、寄付につなげる方法も検討できます。
ただし、寄付の可否は品目、残存賞味期限、未開封かどうか、保管状態、受入先の条件などによって異なります。
3日分以上備蓄した方がいい企業もある
3日分はあくまで基本となる目安です。
例えば、
- 交通機関の復旧に時間がかかる地域
- 多数の従業員が勤務する事業所
- 災害時も業務を継続する必要がある企業
- 病院・福祉施設など利用者がいる施設
- 物流やインフラ関連企業
などでは、3日を超える備蓄が必要になる可能性があります。
自社のBCPや地域の被害想定を確認し、必要に応じて備蓄日数を増やしましょう。
東京都の企業は3日分の備蓄を確認しよう
東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」が施行されています。
条例では事業者に対し、従業員の一斉帰宅を抑制するとともに、従業員が施設内に待機するための3日分の飲料水・食料その他必要な物資を備蓄するよう努めることが定められています。
東京都内に事業所がある企業は、現在の備蓄量が従業員数に対して十分か確認してみましょう。
東京都以外でも、自治体によって独自の条例やガイドラインが設けられている場合があります。
事業所所在地の自治体情報もあわせて確認してください。
企業の防災備蓄量チェックリスト
- □ 災害時の最大出社人数を把握している
- □ 水を1人9L以上準備している
- □ 主食を1人9食以上準備している
- □ 簡易トイレの必要数を計算している
- □ 毛布・保温用品を準備している
- □ 衛生用品を準備している
- □ 来客・取引先の分も想定している
- □ 備蓄場所を従業員へ共有している
- □ 複数フロアへの分散保管を検討している
- □ 賞味期限・使用期限を管理している
- □ 従業員数の変化に合わせて数量を見直している
企業の防災備蓄品について詳しく確認する
この記事では主に「何日分・何個必要か」を解説しました。
水、食料、簡易トイレ、照明、衛生用品など、企業が準備しておきたい備蓄品の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
企業の防災備蓄は何が必要?3日分の必要量・備蓄品リストを防災士が解説
帰宅困難者対策も一緒に見直そう
企業の3日分備蓄は、災害直後に従業員が一斉帰宅せず、施設内で安全に待機するための対策とも深く関係しています。
備蓄だけでなく、安否確認や施設内待機、帰宅開始のルールなどもあわせて整備しておきましょう。
まとめ|企業備蓄はまず従業員×3日分から計算する
企業の防災備蓄では、まず3日分を基準に必要量を計算するとわかりやすくなります。
1人あたりの3日分の基本的な目安は、
- 水:9L
- 主食:9食
- 簡易トイレ:15回分を一つの目安に
- 毛布:1枚
です。
例えば従業員100人なら、水900L、主食900食、簡易トイレ1,500回分、毛布100枚が一つの目安になります。
まずは自社の最大出社人数を確認し、
「現在の備蓄で3日間施設内に待機できるか」
を計算してみましょう。
Bousailyでは、企業・施設・団体などの防災備蓄や、防災用品の選定についてご相談いただけます。
「従業員数に対して何個必要かわからない」「備蓄量を計算したい」「備蓄品をまとめて見直したい」といった段階からでもお気軽にご相談ください。
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